8 中心力と惑星運動
この章では, 力が常に中心方向を向く中心力
\[ \mathbf{F} = F(r)\mathbf{e}_r \]
を扱う. 角運動量保存則が強く効く典型例であり, ケプラーの法則や万有引力の理解へつながる.
8.1 はじめに
中心力問題では, 力の向きが常に位置ベクトルと平行である. そのため力のモーメントが消え, 角運動量が保存する. これによって運動は 3 次元空間の中の 1 つの平面に閉じ込められ, 極座標での記述が特に有効になる.
8.2 この章で扱うこと
- ケプラーの法則
- 角運動量保存則と平面運動
- ケプラーの法則から \(F(r) \propto -1/r^2\) への導出
- \(F(r) \propto -1/r^2\) から惑星の運動への導出
- 重力ポテンシャル, 軌道の分類, 斥力と散乱, 離心率ベクトル
8.3 第12週: 中心力とケプラーの法則
8.4 予習で読む箇所
- 第6章 6.1-6.4
- 「物理のための数学: 円錐曲線」
- 第6章のまとめ(前半)
8.5 輪講での読み方
第6章前半では, ケプラーの法則と角運動量保存から中心力の形へ行く道と, 逆に \(F(r) \propto -1/r^2\) から軌道方程式へ行く道の両方を見る. 角運動量保存, 平面運動, 面積速度一定のつながりを追う.
8.6 ケプラーの法則 (教科書6.1章)
教科書では次の 3 法則を扱う.
- 第1法則: 惑星は楕円軌道を描き, 太陽はその焦点の 1 つにある.
- 第2法則: 面積速度は一定である.
- 第3法則: 周期の 2 乗は長半径の 3 乗に比例する.
8.7 角運動量保存則と平面運動 (教科書6.2章)
8.7.1 中心力
中心力は
\[ \mathbf{F} = F(r)\mathbf{e}_r \]
と書ける.
8.7.2 角運動量保存
このとき
\[ \frac{d\mathbf{L}}{dt} = \mathbf{r}\times\mathbf{F} = \mathbf{r}\times F(r)\mathbf{e}_r = 0 \]
より, 角運動量 \(\mathbf{L}\) は保存する.
8.7.3 平面運動と極座標での運動方程式
角運動量は常に一定の向きをもつので,
\[ \mathbf{r}\cdot\mathbf{L} = 0 \]
を満たす位置ベクトル \(\mathbf{r}\) は, 一定の平面内を動く. したがって, 中心力問題は 2 次元の極座標に落として考えられる.
極座標では, 運動方程式は
\[ \ddot{r} - r\dot{\phi}^2 = \frac{F(r)}{m},\qquad \frac{d}{dt}(r^2\dot{\phi}) = 0 \]
となる. 後者は
\[ \frac12 r^2\dot{\phi} = \text{const.} \]
と書け, 面積速度一定, すなわちケプラー第2法則と等価である.
8.8 ケプラーの法則から \(F(r) \propto -1/r^2\) を導く (教科書6.3章)
ケプラーの法則を用いると, 太陽と惑星の間に働く力が
\[ F(r) = -G\frac{mM}{r^2} \]
の形であることが導かれる(符号は引力を表す).
8.9 \(F(r) \propto -1/r^2\) から惑星の運動を導く (教科書6.4章)
逆に, この逆二乗力からケプラーの法則や軌道の形を導くこともできる.
8.9.1 授業での補足
- 中心力では
\[ \mathbf{F}=F(r)\mathbf{e}_r \]
であり, 力の向きは常に中心方向である. - 角運動量保存から運動が平面に閉じること, さらに面積速度一定がケプラー第2法則に対応することを確認する. - 楕円軌道は極座標で
\[ r=\frac{\ell}{1+\varepsilon\cos\phi} \]
と書け, 楕円, 放物線, 双曲線は円錐曲線として統一的に扱える.
8.9.2 数学補足
楕円, 放物線, 双曲線といった円錐曲線が自然に現れる. 細かい導出はやや重いので, まずは「逆二乗力と円錐曲線軌道が結びつく」ことを押さえたい.
8.9.3 復習で確認したいこと
- 中心力とは何か説明できるか.
- なぜ中心力問題では平面運動になるのか言えるか.
- 面積速度一定と角運動量保存が等価だと説明できるか.
- ケプラーの法則と \(F(r) \propto -1/r^2\) の往復関係を言えるか.
8.10 第13週: 重力ポテンシャルと軌道の分類
8.11 予習で読む箇所
- 第6章 6.5-6.9
- 第6章のまとめ(後半)
8.12 輪講での読み方
ここでは「重力の位置エネルギーと力学的エネルギー」「有限物体の重力ポテンシャル」「斥力と散乱」「離心率ベクトル」「放物極限」を整理する. 細かい導出より, 何が保存し, 何が軌道の形を決めるかに注意する.
8.13 重力の位置エネルギーと力学的エネルギー (教科書6.5章)
万有引力のポテンシャルは
\[ U(r) = -G\frac{mM}{r} \]
である. したがって, 力学的エネルギーは
\[ \frac{m}{2}v^2 - G\frac{mM}{r} = E \]
となる.
8.13.1 軌道の分類
エネルギーの符号によって, 軌道の性質が変わる.
- \(E < 0\) なら束縛運動で, 楕円軌道
- \(E = 0\) なら放物線軌道
- \(E > 0\) なら双曲線軌道
このように, 保存量を見ることで運動の全体像が分かる.
8.14 有限な大きさの物体の重力ポテンシャル (教科書6.6章)
球対称な天体の外部では, 重力は中心に質量が集まった質点のように振る舞う.
8.15 中心力が斥力の場合 (教科書6.7章)
力が斥力である場合には束縛軌道ではなく散乱問題になる.
8.16 離心率ベクトル (教科書6.8章)
逆二乗力では, 角運動量に加えて軌道の向きを表す保存量として離心率ベクトルが現れる. これにより, 軌道の形だけでなく, 空間内でどちらを向いているかも記述できる.
8.17 楕円運動の極限としての放物運動 (教科書6.9章)
楕円軌道の離心率が 1 に近づく極限で, 放物線軌道が得られる. このように円, 楕円, 放物線, 双曲線は連続的につながっている.
8.17.1 授業での補足
- ポテンシャル
\[ U(r)=-G\frac{mM}{r} \]
とエネルギー保存式
\[ \frac{m}{2}v^2-G\frac{mM}{r}=E \]
を軌道の分類と結びつけて理解する. - 球対称な質量分布は, 外部から見れば中心に質量が集まった質点のように振る舞う. - 斥力中心力では双曲線散乱が自然に現れる. - 離心率ベクトルは, 軌道の向きと離心率をまとめて表す保存量である.
8.17.2 数学補足
この節以降は式変形がかなり重い. 講義では, 位置エネルギー, 保存量, 軌道の種類の対応関係を優先して押さえるのがよい.
8.17.3 復習で確認したいこと
- 重力ポテンシャル \(U(r)\) を言えるか.
- エネルギーの符号と軌道の種類の関係を説明できるか.
- 斥力ならなぜ楕円にならないか説明できるか.
- 離心率ベクトルが「軌道の向き」を表すことを理解しているか.