5  運動の3法則と諸概念

この章では, 第2章で導入した運動の記述に対して, 力との関係を導入する. すなわち, 運動を決める基本法則としてニュートンの運動の3法則を述べ, それらから導かれる運動量, 角運動量, 力積, 仕事とエネルギーの概念を整理する.

5.1 はじめに

位置, 速度, 加速度を定義するだけでは, 物体が実際にどのように運動するかは決まらない. 運動の変化を決める法則が必要であり, それを与えるのがニュートンの運動の3法則である.

この章では以下を扱う.

  • 運動の3法則
  • 運動量とその保存
  • 角運動量と力のモーメント
  • 力積
  • 仕事とエネルギー

5.2 第5週: 運動の3法則と運動量

5.3 運動の3法則 (教科書3.1章)

5.3.1 第1法則(慣性の法則)

外力が働かない限り, 物体は静止または等速直線運動を続ける.

5.3.2 第2法則

質量 \(m\) の物体に力 \(\mathbf{F}\) が作用するとき,

\[ \mathbf{F} = m \mathbf{a} \]

が成り立つ. これは, 力が加速度を生み出す基本法則である.

質量が一定であれば, 運動量 \(\mathbf{p} = m\mathbf{v}\) を用いて

\[ \mathbf{F} = \frac{d\mathbf{p}}{dt} \]

とも書ける.

5.3.3 第3法則(作用・反作用)

2 物体の間に働く力は, 大きさが等しく向きが反対である.

\[ \mathbf{F}_{12} = -\mathbf{F}_{21} \]

5.3.4 ポイント

  • 第1法則は, 力がないときの運動の基準を与える
  • 第2法則は, 力と加速度の関係を与える
  • 第3法則は, 2 物体間の力のつり合い方を示す

5.4 運動の3法則の解釈 (教科書3.2章)

5.4.1 慣性系

第1法則が成り立つ座標系を慣性系と呼ぶ. 力学の基本法則は, まず慣性系で考える.

5.4.2 質量の意味

質量は, 運動の変化しにくさ, すなわち慣性の大きさを表している. 同じ力を加えても, 質量が大きいほど加速度は小さくなる.

5.4.3 力の役割

力は運動状態, 特に速度を変化させる原因である. 逆にいえば, 力が働かなければ速度は変化しない.

5.5 運動量保存則 (教科書3.3章)

5.5.1 運動量の定義

速度に質量を掛けた量

\[ \mathbf{p} = m \mathbf{v} \]

を運動量という.

5.5.2 運動方程式

第2法則は, 運動量を用いると

\[ \mathbf{F} = \frac{d\mathbf{p}}{dt} \]

と書ける.

5.5.3 保存則

外力が働かないとき,

\[ \frac{d\mathbf{p}}{dt} = 0 \]

であるから,

\[ \mathbf{p} = \text{const.} \]

となる. これが運動量保存則である. 複数の物体からなる系でも, 外力の合力が 0 なら全運動量は保存する.

5.6 第6週: 角運動量, 力積, 仕事とエネルギー

5.7 角運動量と力のモーメント (教科書3.4章)

この節では外積を用いる. 外積 \(\mathbf{a} \times \mathbf{b}\) とは, 2 つのベクトル \(\mathbf{a}, \mathbf{b}\) に垂直な向きをもち, 大きさが \(|\mathbf{a}|\,|\mathbf{b}|\sin\theta\) で与えられるベクトルである. ここで \(\theta\) は 2 つのベクトルのなす角である. デカルト座標で

\[ \mathbf{a} = (a_x, a_y, a_z),\qquad \mathbf{b} = (b_x, b_y, b_z) \]

と書けば,

\[ \mathbf{a} \times \mathbf{b} = (a_y b_z - a_z b_y,\, a_z b_x - a_x b_z,\, a_x b_y - a_y b_x) \]

で与えられる. ただし, 講義ノートではその計算法には深入りせず, 力学でどのような形で現れるかの概要だけを述べる. 詳しい計算規則は教科書を参照してほしい.

5.7.1 角運動量

位置ベクトルと運動量の外積

\[ \mathbf{L} = \mathbf{r} \times \mathbf{p} \]

を角運動量という.

5.7.2 力のモーメント

位置ベクトルと力の外積

\[ \mathbf{N} = \mathbf{r} \times \mathbf{F} \]

を力のモーメントという.

5.7.3 基本関係

角運動量を時間微分し, 運動方程式 \(\frac{d\mathbf{p}}{dt} = \mathbf{F}\) を用いると,

\[ \frac{d\mathbf{L}}{dt} = \mathbf{N} \]

が得られる. したがって, モーメントが 0 なら角運動量は保存する.

5.8 力積 (教科書3.5章)

5.8.1 定義

時刻 \(t_1\) から \(t_2\) までの間に力を時間について積分した量

\[ \mathbf{J} = \int_{t_1}^{t_2} \mathbf{F}(t) \, dt \]

を力積という.

5.8.2 関係

これは, 第2章で加速度を時間積分すると速度の変化が得られたのと同じ考え方である. 運動方程式

\[ \mathbf{F} = \frac{d\mathbf{p}}{dt} \]

を時刻 \(t_1\) から \(t_2\) まで積分すると,

\[ \int_{t_1}^{t_2} \mathbf{F}(t)\,dt = \int_{t_1}^{t_2} \frac{d\mathbf{p}}{dt}\,dt = \mathbf{p}(t_2) - \mathbf{p}(t_1) \]

となる. ここで

\[ \Delta \mathbf{p} = \mathbf{p}(t_2) - \mathbf{p}(t_1) \]

と書けば,

\[ \mathbf{J} = \Delta \mathbf{p} \]

を得る. つまり, 力積は運動量の変化に等しい.

5.9 運動エネルギーと仕事 (教科書3.6章)

5.9.1 運動エネルギー

質量 \(m\) の物体が速さ \(v\) で運動しているとき,

\[ T = \frac{1}{2} m v^2 \]

を運動エネルギーという.

5.9.2 仕事

物体が位置 \(\mathbf{r}_1\) から \(\mathbf{r}_2\) まで動くとき, 力が変位に沿ってした仕事は

\[ W = \int_{\mathbf{r}_1}^{\mathbf{r}_2} \mathbf{F} \cdot d\mathbf{r} \]

で与えられる.

5.9.3 関係

これは, 力の変位方向成分を動いた経路に沿って足し合わせた量である. 運動方程式を変位方向に掛けて整理し, 始点と終点の間で積分すると,

\[ \int_{\mathbf{r}_1}^{\mathbf{r}_2} \mathbf{F} \cdot d\mathbf{r} = T(\mathbf{r}_2) - T(\mathbf{r}_1) \]

となる. ここで

\[ \Delta T = T(\mathbf{r}_2) - T(\mathbf{r}_1) \]

と書けば,

\[ W = \Delta T \]

が得られる. これが仕事と運動エネルギーの関係である.

5.10 まとめ

この章では, 力が運動をどのように決めるかを見た.

  1. 運動は \(\mathbf{F} = m\mathbf{a}\) で決まる
  2. 運動量と角運動量には保存則がある
  3. 力積は運動量変化を与える
  4. 仕事はエネルギー変化を与える

第2章では運動を記述する量を定義したが, この章ではそれらを変化させる法則と保存則を導入した. これにより, 力学の基本的な枠組みがそろう.