9 座標変換と非慣性系
この章では, 同じ運動を異なる座標系から見たときに何が変わり, 何が変わらないかを整理する. 慣性系, 重心系, 回転座標系, 見かけの力という考え方は, 後の力学や電磁気学でも重要である.
9.1 はじめに
力学の法則は, どの座標系で見てもまったく同じ形になるわけではない. とくに, 加速度をもつ座標系や回転する座標系では, 慣性系では見えなかった項が運動方程式に現れる. それが見かけの力である.
9.2 この章で扱うこと
- 慣性系とガリレイ変換
- 重心系と実験室系
- 回転する座標系
- 遠心力とコリオリ力
9.3 第14週: 座標変換と回転系
9.4 予習で読む箇所
- 第7章 7.1-7.7
- 第7章のまとめ
- 必要に応じて付録 A.11
9.5 輪講での読み方
この章では同じ運動が座標系によってどう見えるかを扱う. 並進系, 重心系, 回転系を区別し, 「見かけの力」がどこから出るかを確認する.
9.6 慣性系 (教科書7.1章)
慣性系とは, ニュートンの第1法則が成り立つ座標系である. 慣性系では
\[ m\frac{d^2\mathbf{r}}{dt^2} = \mathbf{F} \]
が基本法則として成立する.
9.7 ガリレイ変換 (教科書7.2章)
互いに一定速度で動く 2 つの慣性系の間では, 座標はガリレイ変換で結ばれる. 位置や速度の見え方は変わるが, 加速度は同じである. したがって, ニュートン方程式の形は保たれる.
9.8 重心系と実験室系 (教科書7.3章)
2 体問題や散乱問題では, 実験室系よりも重心系で見る方が式が簡単になることが多い. 重心運動を分離すると, 相対運動だけを取り出して考えられるからである.
9.9 回転系 (教科書7.4章)
回転する座標系では, 基底ベクトル自身が時間とともに変化する. そのため, ベクトルの時間微分には通常の微分に加えて, 座標系の回転による寄与が現れる.
この変化を記述するのが角速度ベクトル \(\boldsymbol{\omega}\) である.
9.10 回転系での運動方程式 (教科書7.5章)
回転系で運動を見ると, 見かけの力が現れる. 代表的なものは次の 2 つである.
- 遠心力
- コリオリ力
これらは物体どうしの相互作用そのものではなく, 回転する座標系を採用したことから生じる項である.
9.11 回転系から見た運動の例 (教科書7.6章)
地球上の運動を考えるときには, 地球とともに回る座標系を使うことが多い. そのとき, 自由落下や大気の運動にコリオリ力の効果が現れる.
9.11.1 授業での補足
- 並進する 2 つの座標系 \(S, S'\) の間では, 原点の位置を \(\mathbf{r}_0(t)\) として
\[ \mathbf{r}=\mathbf{r}'+\mathbf{r}_0 \]
と書ける. - 相対速度が一定ならガリレイ変換
\[ \mathbf{r}=\mathbf{r}'+\mathbf{v}_0 t,\qquad t=t' \]
により運動方程式の形は保たれる. - 重心系では系全体の運動量が 0 となり, 2 体問題や散乱問題の記述が簡単になる. - 座標回転では, ベクトル成分は回転行列で変換される. - 回転系では, 基底が時間変化するため見かけの力が現れる. 角速度ベクトルを使うと, 座標値の時間変化は
\[ \dot{x}_i=(\boldsymbol{\omega}\times\mathbf{r})_i \]
の形で表される.
9.11.2 数学補足
座標回転は行列で表すこともできる. ただし講義では, 回転系では基底ベクトルが時間変化する, という点をまず押さえるのが大切である.
9.11.3 復習で確認したいこと
- 慣性系とは何か説明できるか.
- 実験室系と重心系を使い分ける意味を言えるか.
- 回転系で見かけの力が出る理由を説明できるか.
- コリオリ力, 遠心力の違いを説明できるか.