7 振動と波動
この章では, 単振動をさらに一般化し, 減衰振動と強制振動, 連成振動, \(n\) 次元系の振動・波動へ進む. 第4章では 1 つの自由度の運動方程式を解いたが, ここでは複数の自由度や連続体へ広げる.
7.1 はじめに
単振動は, ばねの問題だけに現れる特殊な例ではない. 安定な平衡点のまわりでは, 多くの系が近似的に単振動として記述できる. そこから, 振動が減衰したり, 外力で駆動されたり, 複数の自由度が結びついたり, ついには波動方程式へつながっていく.
7.2 この章で扱うこと
- 安定点まわりの運動
- 減衰振動と強制振動
- 連成振動
- \(n\) 次元系の振動・波動
- フーリエ展開への入り口
7.3 第10週: 安定点, 減衰振動, 強制振動
7.4 予習で読む箇所
- 第5章 5.1, 5.2
- 必要に応じて付録 A.12-A.14
7.5 輪講での読み方
第5章では単振動を一般化する. 安定点まわりの 2 次近似, 減衰振動の三分類, 強制振動の共鳴という 3 つの柱を押さえる.
7.6 安定点まわりの運動 (教科書5.1章)
ポテンシャル \(V(x_1,\dots,x_n)\) の停留点では
\[ \frac{\partial V}{\partial x_i} = 0 \]
である. この点の近くでは, ポテンシャルは 2 次までで近似され,
\[ V(x_1,\dots,x_n) \approx \sum_{i,j}\frac12 V_{ij}x_i x_j \]
と書ける. したがって, 安定点の近くの運動は, 基本的には二次形式で記述される単振動の組として理解できる.
対称行列 \(V\) を直交行列 \(P\) で対角化すると
\[ PVP^T=\operatorname{diag}(k_1,\dots,k_n) \]
となり, 新変数
\[ X_i=\sum_j P_{ij}x_j \]
を用いて
\[ V=\sum_i \frac12 k_iX_i^2 \]
と書ける. 各成分は独立な単振動に帰着する.
7.6.1 1 自由度への帰着
1 変数なら, 近似的に
\[ V(x) \approx \frac12 kx^2 \]
となり, 運動方程式は
\[ m\ddot{x} = -kx \]
である. つまり, 安定点の近くでは多くの問題が単振動に帰着する.
7.7 減衰振動と強制振動 (教科書5.2章)
7.7.1 減衰振動
抵抗があると
\[ \frac{d^2x}{dt^2} + 2\gamma\frac{dx}{dt} + \omega_0^2 x = 0 \]
となる. 減衰の強さによって, 次の 3 つに分かれる.
- \(\omega_0^2 > \gamma^2\) のとき減衰振動
- \(\omega_0^2 = \gamma^2\) のとき臨界減衰
- \(\omega_0^2 < \gamma^2\) のとき過減衰
減衰振動の場合の解は
\[ x(t) = e^{-\gamma t}(C_1\cos\tilde{\omega} t + C_2\sin\tilde{\omega} t),\qquad \tilde{\omega} = \sqrt{\omega_0^2 - \gamma^2} \]
である.
7.7.2 強制振動
外力が周期的に加わるときには, たとえば
\[ F(t) = F_0 e^{i\omega t} \]
のように書いて
\[ m\frac{d^2x}{dt^2} + m\omega_0^2x = F(t) \]
を解く. 外力の角振動数 \(\omega\) が固有振動数 \(\omega_0\) に近いと, 応答が大きくなる. これが共鳴である.
7.7.3 数学補足
ここでは複素指数関数 \(e^{i\omega t}\) を便利な記法として用いる. 実際の物理量は, 最後に実部を取ればよい.
7.7.4 授業での補足
- 安定点のまわりでポテンシャルが 2 次形式になることが, 「一般の安定な運動が単振動で近似できる」理由である.
- 対角化によって複数変数の運動が独立な単振動へ分かれる.
- 強制振動では, 特解が
\[ x_s(t)=\frac{F_0}{\omega_0^2-\omega^2}e^{i\omega t} \]
のような形をもち, \(\omega \approx \omega_0\) で振幅が大きくなる. これが共鳴である.
7.7.5 復習で確認したいこと
- 停留点近傍でなぜ 2 次のポテンシャルになるのか説明できるか.
- 「安定点近傍の一般の運動は単振動」という意味を言えるか.
- 減衰振動, 臨界減衰, 過減衰の違いを説明できるか.
- 共鳴が「固有振動数への外力の同調」だとわかるか.
7.8 第11週: 連成振動と \(n\) 次元系の振動・波動
7.9 予習で読む箇所
- 第5章 5.3, 5.4
- 第5章のまとめ
7.10 輪講での読み方
連成振動は行列の対角化, \(n\) 次元系の振動・波動は連続極限と変数分離が中心である. 電磁気学への準備として, 波動方程式の一般解はしっかり追う.
7.11 連成振動 (教科書5.3章)
複数の質点がばねで結ばれていると, 変位をまとめてベクトル
\[ \mathbf{u}(t) \]
で表すのが自然である. 典型的には
\[ \frac{d^2}{dt^2}\mathbf{u} = -V\mathbf{u} \]
という形になる. ここで \(V\) は結合を表す行列である.
行列 \(V\) を対角化して新しい変数 \(\mathbf{Q}\) を導入すると,
\[ \ddot{Q}_1 = -\omega_1^2 Q_1,\qquad \ddot{Q}_2 = -\omega_2^2 Q_2,\qquad \cdots \]
のように独立な単振動へ分離できる. このときの各モードを基準振動, または固有モードという.
7.12 \(n\) 次元系の振動・波動 (教科書5.4章)
離散系の連成振動から連続極限へ進み, 変位場の振動と波動としてまとめて扱う. 質点とばねを無限に細かくした極限では, 変位 \(u(t,x)\) が
\[ \left( \frac{1}{v^2}\frac{\partial^2}{\partial t^2} - \frac{\partial^2}{\partial x^2} \right)u(t,x) = 0 \]
を満たす. これが 1 次元の波動方程式である.
7.12.1 ダランベールの解
一般解は
\[ u(t,x) = F(x-vt) + G(x+vt) \]
であり, 右向きに進む波と左向きに進む波の重ね合わせとして理解できる.
7.12.2 変数分離
別の見方として
\[ u(t,x) = T(t)X(x) \]
とおく変数分離法がある. すると, 時間方向と空間方向の方程式に分けられ, 三角関数やフーリエ展開が自然に現れる.
7.12.3 授業での補足
- 2 質点 3 ばね系では, 行列 \(V\) の固有値が固有振動数を与える.
- 連続極限では離散変位 \(u_i(t)\) が連続場 \(u(t,x)\) に置き換わり, 波動方程式が現れる.
- 一般解
\[ u(t,x)=F(x-vt)+G(x+vt) \]
は, 右向きと左向きの進行波の重ね合わせである. - 変数分離を使うと, 最終的にフーリエ展開の形で解を表す見方につながる. - この章の内容は, 電磁気学で現れる波動方程式の準備でもある.
7.12.4 数学補足
この章では, 行列の固有値問題とフーリエ展開が重要になる. ただし, まずは「適切な基底に移すと複雑な運動が独立な単純振動に分かれる」という見方を身につけることが大切である.
7.12.5 復習で確認したいこと
- 連成振動が「複数自由度の単振動」だと説明できるか.
- 行列を対角化すると何がうれしいか言えるか.
- 波動方程式の一般解 \(F(x-vt)+G(x+vt)\) の意味を説明できるか.
- この章が電磁気学の波動にもつながることを理解しているか.